美術館をハシゴ

国立西洋美術館の ≪ベルリン国立美術館学べるヨーロッパ美術の400年≫ と東京都美術館の ≪マウリッツハイス美術館オランダ・フランドル絵画の至宝≫ とを見てきました.どちらにもフェルメールの魅力的な少女が<メダマ>として展示されていて,たいへんな人だかりとなっていましたが,それ以外にもいろいろな作品があって,堪能しました.二館をハシゴしたために,コンセプト(ということばを一応つかっておきますが)の違いがわかっておもしろかった,ともいえるでしょう. ≪ベルリン国立美術館展≫では彫刻と絵画とを同列に置いているのがユニークです.聖母子像などの彫刻や浮き彫りがこんなにも作られていたということは,ことによると,むかしの民衆は(絵画よりも)教会内の彫刻によって聖書の物語にしたしんだのではないか,とすらおもってしまいます.彫刻作品のなかではリーメンシュナイダーの「龍を退治する馬上の聖ゲオルギウス」(cat. no. 22)が印象にのこりました.ほかには,お目当てのフェルメール真珠の首飾りの少女」(cat. no. 62).少女の顔や手はややぼやけている,というかソフトフォーカスのようで,画面左端の窓枠や磁器の表面や右下の椅子に打たれた鋲のほうがリアルな質感をたたえていることに,今回気づきました.もうひとつ,おどろかされたのはイグナーツ・エルハーフェンの「イノシシ狩り」と「シカ狩り」(cat. no. 66,67)です.ツゲ材による浮き彫りですが,どうしてこれほどこまかい細工ができたのか,驚嘆させられます.
さて, ≪マウリッツハイス美術館展≫ のほうは,サブタイトルのとおり,17世紀オランダ・フランドル絵画の諸ジャンルを一堂に会しています.<風景画/歴史画/肖像画静物画/風俗画>にわけていますけど,どれも見応えのあるものばかりです.風景画は,自然の光景だけでなく,人物を描きこんでいるのが多いのがいいですね.肖像画ではフェルメールの「真珠の耳飾りの少女」のほか,ヴァン・ダイクの「アンナ・ウェイクの肖像」と「ペーテル・ステーフェンスの肖像」(cat. no. 22,23)が,静物画ではピーテル・クラースゾーンの作品「燃えるろうそくのある静物」と「ヴァニタスの静物」(cat. no. 36,37)が傑出しています(と,いうのがわたくしの感想です).