松苗あけみの絢爛たる世界

松苗あけみ『ベルサイユ狂想曲 〜エマは❤❤がお好き〜』(ぶんか社,2012年10月)読了.孤児院に育ったエマが某侯爵に見初められて玉の輿にのる,というシンデレラストーリーかとおもいきや,「その許婚者を陛下ルイ14世への貢ぎ物として差し出して[・・・]宮廷での自分の地位を確固たるものにしようと」するきわめて打算的な計画が仕組まれていた! と,ここまでならば近世フランス史にじっさいにあったでもあろうはなしですけど,さすが松苗氏だけあって,うら若い乙女(であるはず)のエマは孤児院の院長に仕込まれた<性技>のもちぬしだという,とんでもない設定になっています.(いったい,どんな孤児院なんでしょうね).さらに,近親相姦にもなりかねないストーリーも用意されているのですが,そこまではいたらずに,メルヴェイユ侯爵夫妻が皇太子の養育係をおおせつかる,というハッピーエンド(?)をむかえます.つづく第二話ではエマがルイ15世の<性教育係>になってのてんやわんやがくりひろげられ,さらに第三話はルイ16世の時代,マリー・アントワネットも出てきて,エマは70代の婆さんになっているのですけど,あいかわらずのセックスがらみのエピソードがいっぱいに盛りこまれた,なんとも騒々しいストーリー展開がなされます.オビに「史実1割、松苗妄想9割!?」とあるとおりの,奔放で痛快な作品に仕上がっていて,たいそうおもしろく読むことができました.エマをはじめとするひとびとの衣装や髪などの,装飾過剰といいたいほどの<絵>がステキですね.松苗氏の画集をぜひ,あたらしく編んでほしいものです.