史料としても有益(?)

国際基督教大学博物館湯浅八郎記念館で ≪幕末から明治の諷刺画≫ を見ました.米相場の値段を記したものとか,黒船来航を報じたもの,なまず絵など,世相を伝えると同時に諷刺した作品がいろいろあります.なかでもっとも多いのが「子供遊び」を描いたもので,全体の半数ちかくもあったでしょうか.(出品は全部で67点).「子をとろ子とろ」や「菖蒲打ち」や「水合戦」,「花火合戦」に「雪合戦」など,季節に応じてさまざまな遊びがおこなわれていたことがわかります.もっとも,これらの絵はこどもの遊びに託して当時の政治状況を諷しており,読みとるのにはかなりの知識が必要です.歴史的な動向と,人物や各藩を識別するためのモノ(特産品など)の双方を承知していなければならないでしょう.もっとも,「絵」を見るだけでもけっこうおもしろく,多種多様な「設定」や「場面」や「趣向」を楽しむことができます.それにしても,むかしのひとの好奇心のつよさと,ものごとのとらえかた(およびその表現法)の多様性には,おそれいりましたと申しあげるほかありません.諷刺画は「史実」の正確な報道ではないということから,歴史学ではあまり重視されてこなかったのだそうで,これは残念なことだという意味のことが会場冒頭のパネルに書かれていましたけど,まったくそのとおりで,「子供遊び」では徳川側をひいきするような内容の絵が多いという点などに当時の江戸の民衆意識をみとめることができ,客観的ではないけれどもある種特別な視角を示す史料としてあつかうことができるのではないでしょうか.