近藤ようこ氏の「古事記」

近藤ようこ『恋スル古事記』(角川書店角川グループパブリッシング,2012年10月)読了.ことしが「古事記」編纂1300年にあたっているため,「古事記」にかんする本がいろいろ出ています.わたくしの手元にあるのは『一個人 4月号』『別冊太陽 日本のこころ 194』『芸術新潮 6月号』で,たまたま書店の店頭で見かけておもしろそうだとおもってつい買ってしまった,というだけのことで,とくに「古事記」に興味があったわけではありません.「古事記」関連の本や雑誌を買い集めていたら,サイフがパンクしてしまいます.「古事記」をマンガにしたものも多いようですが,これもかたっぱしから買っていたらきりがないので,近藤氏の作品にかぎって,読んでみることにしました.「古事記」上巻と中巻からイザナキとイザナミ,オオナムジとスセリヒメなど,5つのエピソードをえらんでマンガ化しています.カバーやオビに「神々も恋をした」とあるとおり,神さまたちの「恋」に重点が置かれています.もっとも,ヤマトタケルの物語はタケルの蛮族平定が主内容ですけど,さいごはタケルと女性たちとの情愛を,挿入される歌によって抒情的に謳いあげているので,まさに「恋スル」古事記にふさわしいといえるでしょう.近藤氏の,あまり入念ではない絵も,かえって古代のおおらかさを伝えているようにおもえます.なお,各節のあとに「ちょこっと解説」と題するページが付されていて,著者によるかんたんなコメントを載せていますが,これがけっこうおもしろく,楽しんで読むことができます.