「水彩画」のもつ幅ひろさ

Bunkamura ザ・ミュージアムで ≪巨匠たちの英国水彩画展≫ を見ました.150点あまりの水彩画を8章にわけて展示していますが,すべてマンチェスター大学ウィットワース美術館の収蔵品だそうです.この美術館は「英国の画家による水彩画と素描を約4500点所蔵する英国でも類を見ない美術館」であるとのこと.なかなかにユニークな美術館のようです.風景画がおおく,「第1章」は「ピクチャレスクな英国」を,「第2章」はグランド・ツアーでおとずれたイタリアの光景を,「第3章」はさらに遠方のエジプトや東方を描いていますが,「第4章」は「ターナー」ひとりにしぼり,「第5章」は「幻想」と題してブレイクやフュースリをとりあげ,「第6章」ではラファエル前派をあつかうなど,ヴァラエティーに富んでいます.風景画のほか,風俗画や,文学作品の一場面を描いたもの,博物学の要請に応じたイラストにちかいものもあります.技法的な面でも,淡彩で水墨画をおもわせるようなものもあれば,油彩画と見まちがえるほどのものもあって,「水彩画」という概念が単純で一律なものではない,ということをおしえてくれます.わたくしの印象にのこった作品をいくつかあげておきます.
○ レジナルド・バラット「日没時のスフィンクス、エジプト」(cat. no. 53)
○ サミュエル・パーマー「カリュプソの島、オデュッセウスの船出」(cat. no. 91)
○ アレグザンダー・カズンズ「木の習作(染みこませによる素描)」(cat. no. 136)
○ アンドリュー・ニコル北アイルランドの海岸に咲くヒナゲシとダンルース城」(cat. no. 144)
なお,余計なことかもしれませんけど,本展図録の日本側主催者の「ごあいさつ」に「日本においてはこれまで、英国水彩画の全容を紹介する機会はほとんどありませんでした」と書かれています.が,わたくしは1999年11月に入間市博物館で ≪ヴィクトリア&アルバート美術館所蔵 英国水彩画100選≫ を見ています.(この企画展は翌2000年春までに神奈川,兵庫,福島も巡回したようです).なかで,ウィリアム・ヘンリー・ハントの「プリムローズと鳥の巣」という作品に感嘆したおぼえがありますので,ここに書いておきます.