歌舞伎学会2日目

2日目のきょうは研究発表5本を聞きました.歌舞伎研究の進化につれて,研究対象は細分化され,考証は精緻になって,それはけっこうなことなんですけど,それらの研究がどういうジャンルに属し,どういう位置にあるのかがわかりにくい,という面もあるようです.というより,個々の研究から連想(触発)されるところのほうがむしろ多いんですね.本日の諸発表にもそんな傾向があって,どれもおもしろく拝聴したんですが,さらにひろく考察してほしいとおもう点がいくつかあります.(シロートの無責任で勝手ないいぐさですけど).たとえば原田真澄氏には,人物の類型的な描き方(北条時政徳川家康というような約束)に見られる共通性と差異姓,作品ごとの人物評価のちがいなどをひろく考察してほしいと,おもいます.ビュールク・トーヴェ氏には江戸時代の文化全般(芝居や浮世絵)におけるコマーシャルの実態をあきらかにしてほしいです(たいへん膨大なテーマですが).桑原博行氏の資料紹介はこれだけでも貴重なものですけど,こういう観劇記録はほかにもあったんでしょうか.水田かや乃氏の発表は着眼点がいいですね.「未定稿」となっている『歌舞伎座掌本』の内容変遷の全体像をより充実させてほしいものです.むかし(昭和50年代ころ)の歌舞伎以外の興行のときはどんな内容だったのでしょうか.賀古唯義氏のおはなしにはまったく圧倒されました.<文科系と理科系との統合による研究>のいっそうの進展をお祈り申しあげます.