訃報2件

団十郎丈の訃報に接しました.なんともいうべきことばがありません.歌舞伎座新開場をまぢかにひかえての死は,本人にとってさぞ無念であったことでしょう.若いときには,やれ発声がおかしいのなんのとあれこれいわれていましたが,それでもこのひとにはうつわが大きいとおもわせるところがありました.わたくしがさいごに見たのは昨年3月,国立劇場の「熊谷陣屋」でした.熊谷の人間的な苦悩を描きだす舞台の大きさに感動したことをおぼえています.しかもそれでいて,まだ未完成な,これからの役者だと感じさせる一面もあったのが,このひとの魅力だったのではないでしょうか.
団十郎丈にくらべ,はるかに小さいあつかいですが,杵屋五三郎師の訃報も本日の朝刊に載っていました.2日に,やはり肺炎で亡くなられたとのこと.享年94というのですから,天寿をまっとうされたといっていいでしょう.わたくしはじっさいに演奏をナマで聞く機会はなかったのですけど,CDにのこされた演奏の,これまた大きいとしかいいようのない端正さと迫力に圧倒されます.おふたりのご冥福をお祈りします.