なんともエネルギッシュな旅行記

ヤマザキマリ『世界の果てでも漫画描き 3 チベット』(集英社,2013年 2月)読了.「チベット編」と銘打っていますけど,分量的には前巻からひきつづく「シリア編」が半分のページを占めています.そのあとに「ルッカ&パリ編」があり,「チベット編」となり,さいごにもっとも短い「台湾編」が置かれています.どれもエネルギッシュというかすさまじいというか,ふつうの観光旅行なんかとはまるでちがうてんやわんやを描いています.(はなしをおもしろくするための誇張があるのかもしれませんが).なかで「チベット編」が,サブタイトルにえらぶだけあって,すごいです.高山病にかかり,点滴を受けながら,標高3,700メートルのラサをおとずれ,ポタラ宮にのぼり,腹痛をおぼえてトイレにかけこんだ,という(あまりかんばしくない)エピソードが語られており,ところどころに挿まれる大自然の写真との落差が読者の笑いをさそいます.「台湾編」でも,生水を飲んだために下痢になやまされた,というはなしが出てきます.下ネタをおもしろがるのは,あまりいい趣味とはいえないかもしれませんけど,やはりおもしろいですね.作者も,そうした読者の傾向を予想(予定)して描いているのではないでしょうか.