歌舞伎のあれこれを示す

サントリー美術館で ≪歌舞伎 江戸の芝居小屋≫ を見ました.「歌舞伎座新開場記念展」と銘打っており,「第一章 劇場空間の成立/第二章 歌舞伎の名優たち/第三章 芝居を支える人々」という構成になっています.屏風や浮世絵,台帳,番付などさまざまな資料で江戸歌舞伎の諸相を示しています.わたくしは初期の情景を描く「第一章」がとくに気に入りました.「花下遊楽図屏風」(cat. no. 2)には花見をたのしむひとびとが,貴賤いりまじって描かれています.幔幕をめぐらして毛氈のうえで酒宴にいそしむ高貴なひともいれば,輪舞に興ずるひとたちもおり,刀で争っているひとなんかもいて,当時の雰囲気をつたえてくれています.やがて時代がくだると,常設の芝居小屋ができあがるわけですが,18世紀なかごろの浮世絵に「浮絵」(極端な一点透視図法)があらわれていることにも,おどろかされました.なお,特別出品として,第一期から第四期までの歌舞伎座の復元模型が展示されています.さらに来月開場予定の第五期歌舞伎座の模型もありました.これまた貴重な資料といっていいでしょう.