歌右衛門にまつわるあれこれ

エンパクで ≪六世 中村歌右衛門思い出の名舞台≫ を見てきました.「『籠釣瓶』八ツ橋や『娘道成寺』花子のほか『本朝廿四孝』八重垣姫、『隅田川』斑女の前、『壇浦兜軍記』阿古屋など、歌右衛門歌舞伎座で青年時代から演じ続けた当り役の数々をとりあげ、衣裳や小道具のほか舞台写真や公演資料などゆかりの品々をご紹介いたします」とチラシにあるとおり,おもにここにあげた「当り役」を中心とする資料をいろいろと展示しています.わたくしがおもしろく見たのは歌舞伎座のポスターで,時代により,レイアウトなどにかなりのちがいがあります.1953年1月興行の英語のポスターにはおどろかされました.
14:45 からは大隈講堂で「演劇講座 六世中村歌右衛門を語る」を聞きました.講師は加藤 武・澤村田之助山川静夫の三氏です.(司会は児玉竜一氏).歌右衛門にかんする話題もけっこうありましたが,後半は談論風発田之助氏の子役時代のはなしとか,横綱審議委員会のはなしとか,多様な話題でもりあがりました.加藤氏は声色が上手ですね.山川氏も淀川長治氏のモノマネまでして,会場を沸かせていました.歌右衛門の岡本町の邸を撮影した映像(おそらく初公開)が貴重でめずらしく,洋風趣味にあふれているのがちょっと意外な気もします.さいごに,加藤氏が海外公演でのカーテンコールはいたしかたないが,国内の歌舞伎公演でのそれはつつしんでほしいとの苦言を呈し,山川氏も「勧進帳」幕外の六法の引っ込みに観客席から手拍子がおこることについての批判をされていました.現代の(盛況に見える)歌舞伎に対する危機感がうかがわれて,やや深刻な気持ちにもなりましたけど,それでもこの「演劇講座」はきわめておもしろかったです.