不気味ななかのユーモアとうつくしさのなかの不気味さ

損保ジャパン東郷青児美術館で ≪オディロン・ルドン 夢の起源≫ を見てきました.<第1部 幻想のふるさとボルドー/第2部 「黒」の画家/第3部 色彩のファンタジー>という3部構成になっています.「第2部」がなんといっても不気味ですね.『夢のなかで』や『起源』と題する画集,エドガー・アラン・ポーゴヤボードレールに触発された作品など,すごいものばかりです.しかし,不気味ななかにどこかユーモラスな感じもあります.そのいい例が本展のチラシに取りあげられている「蜘蛛」(cat. no. 82)でしょう.「骸骨」(cat. no. 65)や画集『夜』の「キマイラ」(cat. no. 78)なんかも,ほんらいは恐ろしいものであるはずなのに,かわいらしいようにすら,おもえてきます.いっぽう,「第3部」にはあざやかな色彩による作品が置かれているのですけど,そのはなやかさとはうらはらに,むしろ死の世界とでもいうような静謐な雰囲気がただよっているのに,気づきました.もっとも,これはわたくし個人の直観ですので,ここにルドンの本質がある,などと主張するつもりはありません.なお,「第1部」にはルドンの初期作品やルドンに影響をあたえたひとの作品が展示されていますが,なかで,ロドルフ・ブレスダンの作品に魅かれました.2009年 1月に八王子夢美術館で見て,ちょっとおもしろそうだとおもったのですが,そうとうにすごいひとだとおもいます.「善きサマリア人」(cat. no. 11)が傑作です.主題よりも,周囲の森のに描写に圧倒されます.これからも注目したいものです.