好もしい著書であるだけに,あえて苦言を

山川静夫『歌舞伎は恋 山川静夫の芝居話』(淡交社,平成25年 6月)を読みました.『演劇界』に連載した随筆を中心に,種々の雑誌などに寄せたエッセイを<第一章 歌舞伎は恋/第二章 かぶきのたて糸・よこ糸/第三章 かぶきことばあれこれ/第四章 忘られぬ歌舞伎役者>の4章にわけて掲載しています.「半世紀にわたって歌舞伎を見続けてきた」著者の自分史といってもいい,歌舞伎とのかかわりを証言した記録であり,歌舞伎へのあついおもいを語った,興味深い内容いっぱいの書物です.わたくしがヘタな解説や要約をするまでもないでしょう.この分野に関心のある方へは,じっさいに読んでくださいとおねがいするばかりです.ところで,重箱のすみをつつくような詮索で恐縮ですが,気になった点を書いておきます.「盛綱陣屋」の配役での「微妙」に「びみょう」というルビを振っている(p. 23)こととか,「すべからく、芸の̏のっぺらぼう̏はよくない」(p. 38)とか,「平成二十一年正月に急逝した五世中村富十郎」との記述(p. 220)とか,些細なこととはいえ,こうした誤謬は,(ことにわかい)読者にまちがった知識をあたえてしまいかねないので,あえて指摘しておきます.