なかなかに濃い(しかしわかりにくいところもある)講座

学習院大学でおこなわれたシンポジウム「マンガのアルケオロジー 視覚的な物語文化の系譜」を拝聴してきました.はじめに夏目房之介氏の基調発表「マンガ史再考のために」があり,これまでのマンガにかんする言説(の歴史)を要約したうえで,あらたな視角をのぞむ,というようなことを語られました(と,わたくしは理解しました).ついで山本陽子氏が平安時代の絵巻と現代のマンガとの関連を論じ,似ているところと差異とを指摘されましたが,山本氏は「大人げないもの」ということをキーワードとされているようです.(と,これもわたくしの直観的な印象です).ついで佐々木果氏のヨーロッパ文化におけるマンガについての発表があり,ここも内容的には盛りだくさんなのですけど,ウィリアム・ホガースとロドルフ・テプフェールとを強調されていたように,おもいました.野田謙介氏の発表は「学習院大学川崎市市民ミュージアム共同研究について」と題されていますけど,下川凹天についての話が過半を占め,このひとの重要性をうったえることに主眼があったようにもおもえます.現代マンガの系譜を図式化するうえで,凹天の存在は重要であるらしいのです.
休憩をはさんだ「第2部」では宮本大人氏もくわわっての討議がなされましたが,マンガにかんするさまざまな要素のなかで,「コマ」がとくに問題とされていたようです.といっても,これがけっこう厄介で,今回の発表で示された古今東西の「コマ」にも,図像的・時間的な要素のほか,ことば(文字)の有無とか,ストーリー展開上の一場面だけを描いてみせる(他の場面は描かない)ものとか,いろいろと複雑な面があるらしいのです.これをキッカケとして,マンガ研究のさらなる展開がなされることを期待したいですね.