パステルカラーだけではない

三鷹市美術ギャラリーで ≪マリー・ローランサン女の一生≫ を見ました.マリー・ローランサンといえば,パステルカラーで女性たちを優美に描いた,甘ったるい作風の画家だ,というイメージがあって,それだけにあまり好きではなかったのですが,たまたま展示を見て,そうした甘ったるさだけではないことに気がつきました.初期の作にはフォーヴィスムキュビスムの作風があり,また,絵画というよりも(現代の用語でいうならば)イラストにちかい面もあるようです.が,やはりローランサンの特色は,軽やかな色彩の女性たちにあるというべきでしょう.そのなかで,目の描き方が独特であることに,これも今回はじめて気づきました.アーモンド型の目のほとんどを黒目にしている,つまり白目が描かれていないものがあるんですね.ふつうならありえない描写ですけど,ここから,なんともいいようのない不思議な雰囲気が立ちのぼってきます.夢見ているかのような,あるいは悲しみをたたえているかのような,ここに描かれている女性の表情には,見るものをまどわす,解釈のむずかしさがあります.ほかに,立体感が希薄であることも特色としてあげられるかとおもいます.これも,わるくいえば薄っぺらだ,ということになりますけど,軽やかな印象をつくりだしている要因ではあるでしょう.もうひとつ,複数の女性たちを描いた作品が,わたくしにはひとりの女性であるかのようにおもわれた,ということを感想としてあげておきます.影というか分身というか,ひとりの女性の多面性をあらわしているかのように感じられたのです.シロートの勝手な妄想にすぎませんけど,こういった見方も(口幅ったいいいかたですが)ステレオタイプを打破する見解としてあってもいいのではないかと,かんがえます.