空気を感じさせる絵

損保ジャパン東郷青児美術館で ≪オランダ・ハーグ派展 近代自然主義絵画の成立≫ を見ました.ハーグ派とは,19世紀後半のオランダでバルビゾン派の影響を受けながら,17世紀オランダ黄金時代の絵画を再評価して,オランダ独自の風景や民衆を描いた画家たちを指しているとのこと.本展は「このハーグ派に焦点をあてた日本で最初の展覧会」だそうです.風景画が多いのですが,ほかにも室内でのひとびとの生活を描くもの,森のなかの動物や家畜,農民,海や船など,いろいろです.作風や技法も画家によってちがいがあり,綿密な描写をおこなっているものもあれば,印象派のように筆のタッチを残したものもあって,一概にはいえません.風景画において,風や水の流れを感じさせられる作品が多かった,というのがわたくしの大雑把な印象です.まるでじぶんがその場所にあって,そこの空気を吸いこんでいるかのように感じたのです.そのみごとな例として,ヴィレム・ルーロフスの「虹」(cat. no. 36)をあげておきます.なお,最後のセクションでは「ハーグ派の影響を受けた」ゴッホモンドリアンをあつかっています.モンドリアンの風景画というのは,わたくしははじめて見ました.もっとも,「夕暮れの風車」(cat. no. 89)は抽象画にちかいくらいの異色作で,ちょっとふしぎ(不気味?)な感覚がただよっています.これが,もっともインパクトのある作品だといっていいかもしれません.