紙,といったってぺらぺらなものばかりじゃない

紙の博物館で ≪金唐紙展≫ という企画展を見てきました.金唐紙とは,エンボス加工した和紙にさらにいくつかの処理をほどこして,凹凸のある豪華な装飾品(壁紙など)にしたものらしいんですね.ルネサンス期のヨーロッパで革で作られた「金唐革」というのがあって,これが日本に輸入されると,煙草入れなどに用いられたようですが,革に代えて和紙でつくることを,むかし(江戸から明治)の日本人はこころみたのだそうです.ただし,その技法はいつか忘れられてしまったのが,今から30数年まえ,重要文化財である某建築の壁紙の修復をおこなうにあたって,そこに金唐革紙が使われていたことから,むかしの技術を復元しようということになり,上田尚氏が試行錯誤のすえ,ついに復元に漕ぎ着けたとのことです.やや厚手の和紙に錫箔を貼りつけ,さまざまな文様を刻み込んだ木の型に押しあてて,刷毛で叩いて凹凸をつけ,ワニスを塗り,地の面には彩色をほどこすなど,じつにこまかい作業がおこなわれています.(これらの工程は展示室内のビデオで見ました).そうしてできあがった作品がいくつか展示されていますが,どれも豪華ですばらしく,まったく圧倒されます.おもしろいことに,木の型は浮世絵をつくるときのような平面の版木ではなく,円柱型です.これを彫ったのは,どういうひとたちなんでしょうか.その職人技には,やはり圧倒されます.