奇妙な作風

panpanya『蟹に誘われて』(白泉社,2014年 4月)というマンガを書店の店頭で見かけて,作者についての知識がまったく無く,内容も不明なのに,つい買ってしまいました.[以下ネタバレ注意].
なんとも奇妙な作風です.登場する少女(中学生?)の顔かたちは手抜きといってもいいほどの簡単な描線で描かれ,目も白丸だけで瞳はありません.その一方,特定のものや景色は過剰なくらいの線が緻密に書きこまれて,ローキーな画面を作りだしています.つげ義春氏のマンガにもこんなコマがあったようにおぼえていますが,影響を受けているのでしょうか.が,内容ははるかにシュールで,ヘンなものばかりです.登場人物(?)もふしぎで,一つ目小僧かとおもったら,ガスマスクのような輪型の突起が前面にひとつ,両耳にあたるところにも輪型の突起がある,ロボットなのか化物なのかわからないものが出てきたり,箱をかぶっているかのような,頭と顔が立方体で目鼻のない,学校の先生がいたりします.二本足で立って歩く人語を話す犬,喋る魚,頭脳が演算処理装置として利用されているイルカなど,いったい何なんだといいたくなるほどです.しかし,作品から受ける印象は,怪奇とか不安といったものではなく,ふしぎなおもしろさに満ちていて,どこかなつかしいような感じすらあります.手抜きと過剰が混在している画面のためでしょうか.この作者にはこれからも注目したいものです.