へ〜とおもわされることばかり

木村泰司『名画は嘘をつく』(大和書房,2014年11月)という文庫本を書店で見かけ,買って,読んでみました.「タイトルの嘘」など10の章にわけて,絵画が描いているもの(と,わたくしたちがおもっているもの)とそこに描かれているもの,そのように伝えられてきたものの実際を吟味・検証しています.冒頭にとりあげているレンブラントの「夜警」は「夜ではなく昼の場面」なんだそうですね.「時間を経て表面のニスが褐色化した結果、夜の場面を描いたかのように映ってしまった」(pp. 20-21)のだそうです.また,「この時代、絵画にタイトルなどありませんでした。画家自身が自分の作品にタイトルをつけるのは、展覧会が公募制となり、画廊での個展が開かれるようになる19世紀になってからのことです」(p. 20)という指摘もあります.あるいはムンク「叫び」について,「このタイトルの人物の表情から、多くの方が私同様にこの人物が叫んでいるのだと思われることでしょう。ところが、この人物が叫んでいるのではなく、ムンク自身が夕暮れどきに体験した”自然を貫く叫び”という幻影を表現したものだと知ったときには私も驚愕。人物も叫んでいるのではなく、耳をふさいで叫びから自分自身を守ろうとしているのだと知って、よりいっそう驚いたのでした」(p. 26)と記されています.ほかにもへ〜とおもわされるような記述がいろいろあり,どこもおもしろく読むことができます.