美術館をハシゴ

国立新美術館の「ルーヴル美術館日常を描く―風俗画にみるヨーロッパ絵画の神髄」を見てきました.初来日のフェルメール天文学者」をはじめ,ムリーリョの「蚤をとる少年」やマセイスの「両替商とその妻」など,美術書で紹介されてきた有名な作品が多かったためでしょうか,場内はかなり混雑していました.サブタイトルにあるとおり,近世〜近代の風俗画を中心にしていますが,その対象や描き方はじつにさまざまで,この企画展ではそれらをいくつかに分類して提示していますけど,わたくしのごくおおざっぱな感想をいうなら,どの「風俗画」にも寓意というか,秘められた意味があるのではないか,あるいは意味の解読を誘う,という要素があるのではないだろうか,ということです.こんな抽象的ないいかたではなにもいったことにならない,と批判されるでしょうし,チラシにも「風俗画には必ずしも現実が描かれているわけではありません。日常の装いの中に、複雑な道徳的・教訓的な意味が込められていることもあります。これらを読み解いていくことも、風俗画ならではの楽しみといえます」とあるので,わざわざいうまでもなかったことかもしれません.とくに印象にのこったものとして,シャルル・パロセル「象狩り」(cat. no. 56)と,猫を擬人化した2作品(cat. nos. 77-78)をあげておきます.
六本木から上野にまで足をのばして,国立西洋美術館で「グエルチーノ展 よみがえるバロックの画家」を見ました.グエルチーノの作を見るのははじめてです.光と影の描写がすごいですね.新聞広告やチラシを見ていたときには,人物の身振りが大仰にすぎるようにおもったんですが,じっさいの作品に接して,それほどでもないことに気づきました.とにかく絵そのものが大きいので,身振りもこれくらいでちょうどいいくらいです.なかで圧倒されたのが「キリストから鍵を受け取る聖ペテロ」(cat. no. 15)です.「マルシュアスの皮をはぐアポロ」(cat. no. 16)もすごいです.光と影の描写の絶妙さと,ダイナミックな構図とがこの作家の特質だといっていいでしょう.もっとも,後期になると作風にやや変化があり,静謐さがあらわれてくるようで,そうした面を示す例として(そしてわたくしの印象にのこったものとして)「聖フランチェスコ」(cat. no. 37)と「キリストとサマリアの女」(cat. no. 40)とをあげておきます.