又兵衛を語る

東京大学文学部一番大教室でおこなわれた「布施学術基金公開講演会 「画家岩佐又兵衛」」を聴いてきました.講師は辻惟雄東大名誉教授です.又兵衛という人の伝記的な紹介にはじまり,その作品を数多くのスライドで示しつつ,又兵衛の手法や特色や魅力を語られました.人物画や風景画などいろいろあるなかで,「山中常盤絵巻」がなんといっても,すごいですね.血みどろの描写にはまったく圧倒されます.「浄瑠璃物語」は,画面全部を覆いつくさんばかりに描き込まれた装飾が強烈な印象をあたえます.さらに,「洛中洛外図屏風」や「湯女図」などの風俗画について,真贋や影響の問題もふくめて,又兵衛にかんする研究の現状を解説されました.この講演会に参加したひとびとは,おそらく辻先生の業績や又兵衛についての知識をかなりお持ちだとおもうのですが,そうしたひとにとっても,またさほど詳しくないひと(がいたとして)にとっても,今回の講演が又兵衛(およびその作品)の魅力を十分に説きあかす有益なものであることは,うたがいありません.