パロディー化のおもしろさ

遠藤淑子『なごみクラブ 6』(竹書房,2015年 7月)を読みました.「第57話」のつぎに置かれている「リバーシブル」は描き下ろしなのでしょうか.それぞれの冒頭の1ページ目とラストの1コマは,絵もセリフもほとんど同じですし,ほかにも同じセリフがあちこちに出てきます.「第57話」をパロディー化したというか,あるいは「第57話」で描かれたことを逆の面から,合わせ鏡を用いて映しだしたかのような,ふしぎな趣きを感じさせる作品になっています.おなじく描き下ろしの作であるらしい巻末の「なごみ学園」も,本編での登場人物たちが高校生となって出てきて,「第56話」でちらりと引用したO.ヘンリーの他の作をここでも持ちだしたり,フジツボのママさんを保健室の先生として登場させたりと,パロディー化が目立っています.遠藤淑子氏のこうした手腕はバツグンですね.切ないほどの,ひとのこころの琴線にふれる絶妙のことばとともに,マンガ史に特筆大書されるべき遠藤氏の特質として,推奨したい,と,おもいます.