希少価値への執念(?)

国立西洋美術館で ≪黄金伝説 古代地中海世界の秘宝≫ を見ました.はるか古代から,ひとびとの「黄金」へのあこがれは相当のものであったらしく,死者への副葬品として用いたり,あるいは権力の誇示としてでしょうか,さまざまな装飾品がつくられてきています.そこに施こされた細やかな意匠には,まったくおどろかされます.なかで,エトルリアの粒金細工というのがすごいですね.現代の宝飾品にほどこされるミルグレインという技法や日本の魚々子に(形態のうえからは多少)似ているのですが,彫るのではなく,極小の金の粒を金の土台に接着しているのだそうです.「動物模様のある留め金」(cat. no. 211)はその極致といっていいでしょう.ほかに,「黄金」にまつわるギリシア神話を描いた西洋絵画をいくつか展示していますが,この部分はやや貧弱であったのが残念です.もっといろいろと,たとえば「パリスの審判」や「ダナエ」を描いた絵画を多くあつめて比較展示したなら,よりいっそうの興味をかきたてたであろうとおもわれるのですが・・・.