いろいろな見方

昨年は赤塚不二夫氏の生誕80周年にあたっていて,「おそ松さん」という新作アニメが放映されたり,赤塚不二夫氏にかんするイベントもいろいろと催されたりしたようです.そうした流れに乗るもののひとつでしょうか,『pen + いまだから、赤塚不二夫』(CCCメディアハウス,2016年 6月)というのが書店の店頭にあったので,つい買ってしまいました.赤塚氏の人と作品を紹介する本や雑誌はこれまでにもいくつか出ていますけど,本書は大勢のひとがさまざまな角度から語っているのが特色です.おすすめの作品やキャラを挙げたり,赤塚氏の作品を元にした独自のマンガなどを公開しているひともいます.なかで,わたくしは「赤塚不二夫作品にみる、満州の影。」と題する四方田犬彦氏の論考と,「少年マガジン」の編集者だった五十嵐隆夫氏と赤塚りえ子氏の対談をとくに興味深く拝読しました.
ほかに,椹木野衣氏がドキュメンタリー映画『マンガをはみだした男』に「内地では考えられないくらい広大な陸地に日が落ちるとき、何十万羽とも知れぬ真っ黒なカラスの大群が、真紅に染められた夕焼け空を背に毎日、二時間にも及んで北を目指して飛び続ける」という「赤塚自身による鮮烈な記憶があしらわれている」と書かれていたので,『昭和二十年の絵手紙 私の八月十五日』(私の八月十五日の会/A.セーリング,2004年 7月)を引っぱりだしてみたところ,赤塚氏が「赤い空とカラス」という作を寄せておられたのを見いだしました.