久しぶりの文楽

国立小劇場で『仮名手本忠臣蔵』を見てきました.文楽にいったのは,昨年9月以来です.歌舞伎や文楽への興味が萎えてしまって,見たいという気が起きなかったのですが,今月の文楽公演は大序から十一段目までの通しですので,これならば一見の価値ありとかんがえました.第一部と第二部を通して見ると,10時半から夜の9時半すぎまで,11時間以上劇場内にいることになって,かなり疲れます(笑).それでも,十分に堪能した,というのが正直な感想です.そして,久しぶりの観劇だったせいか,いろいろな発見があった,というのが次なる感想です.もっとも,こんなふうにいうと,おまえはこれまでなにを見ていたんだと批判されそうですけど,文楽というものがけっして単純なものではない,ということをおもい知らされました.歴史的な事件の顛末や人間の喜怒哀楽を描く,というだけでなく,さまざまな工夫がなされていて,それらをトータルに楽しみつつ,演者と見物とがつくりあげてきたのが,文楽ではないかと,おもうのです.浄瑠璃にも,時代と世話の別があり,道行には音楽的な(歌いあげるかのような)要素が濃厚です.舞台のつくりも,幕を引いて場面転換をするときもあれば,居所替りもあり,七段目では平右衛門の太夫だけが舞台下手で無本で語り,まるでステレオ放送を聞いているかのような感覚を味わうことができます.人物の動きも,このひとはここでこんな仕草をするのか,と,あらたに発見した点も多々あります.これからも,ときおりは劇場にかよいたいものです.