遠藤淑子氏の新刊

『アリル 〜午後のお茶は妖精の国で 番外編〜』(祥伝社,2011年 9月)を読みました.深刻なストーリーとファンタジーとギャグ(?)という,ふつうは共存がむずかしい要素が渾然一体となっているのが,特色です.「午後のお茶〜」はもともと短編の連作としてはじまり,第3作が全10話の長編となってコミック3冊で完結したんですが,今回の本には番外編5点をおさめています.本編全10話ももちろんいいんですけど,いろいろな設定の人物が登場する番外編のほうが,むしろおもしろいですね.ファンタジー味のつよい「魔法使いの内弟子」,ヴラド・ツェペシュの所業をおもわせる残酷な描写のある「妖精の石」,マンザイふうなやりとりとドンデンガエシが笑わせる「プラネット」などヴァラエティーに富んでいます.何気ないセリフにも,ひとのこころの繊細さが痛いほどにあらわされていて,いつもながらの遠藤氏の手法だとおもいつつも,感動している自分に気づきます.