2011-01-01から1年間の記事一覧

流水りんこ氏の新刊3点

『インド夫婦茶碗 16』と『昭和のこども 3』と『インドな日々 4』を読みました(はじめの2点はぶんか社,『日々』は朝日新聞出版刊,すべて2011年 9月).どれも著者を主役(?)とするエッセイコミックですが,内容や対象へのアプローチのしかた,描き方に…

演目について

昨日,国立小劇場の文楽公演にいってきました.その感想をこのブログに載せるべく,あれこれと書いたんですが,どうもうまくまとまらなかったので,やめてしまいました.本日,一日遅れにはなりますけど,感想文をなんとかまとめようとして,きのう書いた部…

年齢のせい(?)

赤瀬川原平『健康半分』(デコ,二〇一一年七月)を読みました.「病院の待合室に置く小冊子『からころ』に「病気の窓」というタイトルで連載していたもの」だそうです.巻末の注記によれば初出は「二〇〇六年二月〜二〇一一年六月」とのことですが,全部で2…

マンガ史にかんする証言(あるいはマンガ史のための資料)

小長井信昌『わたしの少女マンガ史 別マから花ゆめ、 LaLaへ』(西田書店,2011年 8月)を読みました.小長井氏は1930年のお生まれで,昭和30年に集英社に入社,少年雑誌の編集部に配属されて10年ほどをすごしたあと,『りぼん』や『別冊マーガレット』などの…

相変わらずとはおもいつつ・・・

桑田乃梨子『桑田着ぐるみ劇場 だめっこどうぶつ 5』(竹書房,2011年 9月)読了.例によって例のとおりの内容なんですけど,やはりおもしろいですね.桑田氏の作品は基本的に学園マンガで,この「だめっこどうぶつ」も高校生の心理や感性を動物に仮託して描…

奇妙な作風

川原由美子『ななめの音楽 II』(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス,朝日新聞社/朝日新聞出版,2011年 8月)読了.ファンタジーかとおもうと,第二次世界大戦中の戦闘や爆撃などの映像も出てきます.過去のいまわしい記憶がゲームとして再現されるらしいのです…

キワモノ?

江宮隆之『團十郎と海老蔵 歌舞伎界随一の大名跡はこうして継承されてきた』(学研新書094,学研パブリッシング/学研マーケティング,2011年 8月)を読みました.さて,はなしはまるで変わりますけど 6月26日に日本橋室町野村ビル(YUITO)で織田紘二氏の講演…

高齢化社会マンガ?

ヤマザキマリ『地球恋愛 1』(講談社,2011年 8月)を読みました.ずいぶんおおきいスケールのタイトルですけど,内容は逆に,世界のどこかのかたすみでの,人生をリタイアしたようなひとたちのささやかな物語ばかりです.波乱万丈のストーリーがあるわけで…

「かまける」

このところの暑さにかまけて,ブログの更新がとどこおっていました,と書こうとして,念のため辞書をひいたら,「かまける」とは「あることに熱中して,ほかのことを省みなくなる」の意なんだそうですね(『辞林21』三省堂,1993年 7月).わたくしは,暑さ…

吉右衛門の盛綱

大隈講堂で「盛綱陣屋」の映画を見ました.先月13日に小野講堂で見た「熊谷陣屋」が昭和25年 1月だったのに対して,こちらは28年11月の舞台を撮影したものだそうです.4年ちかくたっているので,撮影機材なども進歩したのでしょうか,カメラワークや録音も…

『怖い絵』文庫化

中野京子『怖い絵 泣く女篇』(角川文庫,角川書店/角川グループパブリッシング,平成二十三年七月)を読みました.「『怖い絵 2』に加筆訂正し、 新たに二作を書き加えて文庫化したものです」との注記があります.「泣く女篇」と銘うっているのは,親本では…

小説?

中野京子『芸術家たちの秘めた恋 メンデルスゾーン、 アンデルセンとその時代』(集英社文庫,集英社,2011年 7月)を読みました.親本は『メンデルスゾーンとアンデルセン』(さ・え・ら書房,二〇〇六年四月)だそうです.タイトルにあるとおり,19世紀の偉…

ひねった設定がおもしろい

松苗あけみ『グリム艶童話 恋を欲しがるお姫様たち』(ぶんか社,2011年 8月)を読みました.グリム童話の「白雪姫」や「いばら姫」を下書きにしているんですが,それらをひねってパロデイー化しているところがおもしろいですね.そして,作品ごとに別の人物で…

吉右衛門とは?

エンパクで《初代中村吉右衛門展》を見てきました.初代吉右衛門といえば,六代目菊五郎とならぶ近代の名優で,時代物にすぐれ,独自の名調子で観客を魅了した,と,歌舞伎関連の本には特筆大書され,そして,たとえば戸板康二氏の著書などにはその役柄と人…

堀出し物?

東京国際ブックフェアにいってきました.電子出版にかんする展示が多いですね.この分野にこそ業界の未来があるとかんがえているのか,積極的なアッピールや講演をおこなうブースが多々ありました.が,因循なわたくしは紙を媒体とする出版物のほうに興味が…

新境地?

川原由美子『ななめの音楽 1』(眠れぬ夜の奇妙な話コミックス,朝日新聞社/朝日新聞出版.2011年 7月)を読みました.これまでの川原氏の作品とはまるでちがうようです.近未来SFなんでしょうか.(あえていうなら「翡翠の森」にちかいのかもしれません…

ファミリーもの(?)

秋月りす『中間管理職刑事』(竹書房,2011年 7月)を読みました.オビに「秋月りす最初で最後?の刑事4コマ!」とあります.殺人事件など深刻なエピソードも出てきますけど,作品の構成としては4コマ目のオチをたのしむギャグマンガであり,全体の雰囲気…

海老蔵復帰

海老蔵丈が9ヶ月ぶり(?)に新橋演舞場の七月公演に出演したそうです.「待ってました」の声がかかったなどと,新聞は好意的に紹介しているようですけど,はたしてそれでいいのかどうか・・・.こういう報道のウラには,松竹からのはたらきかけがあったのでは…

超ユニーク

川原 泉『コメットさんにも華がある』(白泉社,平成23年 7月)読了.前巻の『レナード現象には理由がある』が平成18年 7月刊行ですから,5年ぶりの出版なんですね.シリーズ冒頭の「レナード現象には理由がある」の掲載が『メロディー』2003年 1月号とのこ…

ウラから見た歌舞伎あれこれ

日本橋室町野村ビル(YUITO)の5Fホールで織田紘二氏の講演を聞きました.『芸と人 戦後歌舞伎の名優たち』の出版を記念しての催しだそうです.本には掲載できなかったカラー写真を大量に使って,役者さんたちの思い出の舞台や人柄やエピソードやらをたっぷ…

9年ぶり

一条ゆかり『有閑倶楽部 11 有閑伝説』(集英社文庫,集英社,2011年 6月)を読みました.第10巻が2002年 4月刊行ですから,まる9年のあいだを置いての出版になります.「『有閑倶楽部』は完結したんですか?と、 よく聞かれる」と「あとがき」に書かれている…

内側からの歌舞伎史

織田紘二『芸と人 戦後歌舞伎の名優たち』(演劇出版社,2011年 4月)読了.この本のことは朝日新聞の読書欄(6月12日)で知りました.「役者は全役のせりふと型を覚えていなければならないとされるが、 「熊谷陣屋」の稽古で監修をしていた女形の歌右衛門は…

特定の地域へのこだわり

森薫『乙嫁語り 3』(エンターブレイン/角川グループパブリッシング,2011年 6月)を読みました.19世紀後半の中央アジアの遊牧民たちの生活を描いています.もっとも,今回の第3巻はイギリス人のスミスさんが主役になっていますけど,スミス氏の物語とい…

けっこう多面的な入門書

『サライ 7月号』(小学館,2011年 6月)を買い,「特集 美術の見方」だけを読みました(なお,表紙には「美術の見方」とありますけど,目次では「これから美術の話をしよう」となっています).四つのセクションにわかれ,辻 惟雄氏による「12作でわかる …

印象派とその背景

中野京子『印象派で「近代」を読む 光のモネから、 ゴッホの闇へ』(NHK出版新書 350,NHK出版,2011(平成23)年 6月)を読みました.「二〇一〇年秋の「ドガ展」(横浜美術館)で行なった講演「ドガの時代」を基に書き下ろしたもの」だそうです.<印象派>…

書き下ろしが多いのがうれしい

坂田靖子『オレンジとレモン 坂田靖子よりぬき作品集』(ジャイブ,2011年 6月)を読みました.ほとんどが『JUNE』に載せたもので,ホモセクシュアルの匂いが濃厚にただよっている作品が多いです.今回の本のための書き下ろしのほか,「メイキング」もいくつ…

斬新な視点からの読み解き

田口章子『歌舞伎から江戸を読み直す −恥と情−』(吉川弘文館,二〇一一年(平成二十三)六月)を読みました.江戸時代にかんする(現代のわたくしたちの)イメージ,およびその時代に産みだされた文芸作品などに対する評価には,かたよりやマチガイがあるの…

細部への執着

吾妻ひでお『地を這う魚 ひでおの青春日記』(角川文庫,角川書店/角川グループパブリッシング,平成二十三年五月)を読みました.作者以外の人物(男性)は動物のすがたであらわされ,ヘンな生き物やロボットがやたらと出てきます.吾妻氏の特質として<シ…

グロい美術史

小池寿子『内臓の発見 西洋美術における身体とイメージ』(筑摩選書 0018,筑摩書房,二〇一一年五月)を読みました.小池氏はダンス・マカーブルなど,ちょっとかわった角度から西洋美術史に取り組んでおられますが,今回の新著では,ずばり,人間の「内臓…

五百羅漢

江戸東京博物館で《増上寺秘蔵の仏画 五百羅漢 幕末の絵師 狩野一信》を見ました.すごいですね,としかいいようがありません.グロいのもあれば,ユーモラスな絵もあります.人物の衣装のこまかいところを入念に描いているのに,感心しました.金泥の効果的…